知的障がい、精神障害、認知症などの理由で判断能力の不十分な方々は不動産や預貯金などの財産を管理したり身のまわりの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。
また、自分に不利益な契約であってもよく判断することができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあうおそれもあります。
このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが「成年後見制度」です。
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法定後見
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制度の趣旨 |
判断能力が不十分になってから利用 |
制度の利用類型 |
家庭裁判所に親族等が申立て |
後見人等の選任 |
家庭裁判所が選任 |
本人と後見人等との関係の割合 |
親族が55.6% 親族以外が44.4% |
後見人等を監督する |
家庭裁判所 |
後見人等の事務 |
財産管理・身上監護 |
本人の資格制限 |
資格制限有 |
後見人の権限 |
本人の法律行為の代理権、取消権 |
後見の開始 |
申立て→成年後見人等の選任 |
申立て権者 |
本人・配偶者・4親等内の親族・市町村長 |
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任意後見
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制度の趣旨 |
お元気なうちに利用 |
制度の利用類型 |
本人と後見人候補者との契約→判断応力低下後に家庭裁判所に申立て |
後見人等の選任 |
本人 |
本人と後見人等との関係の割合 |
本人が選んだ方 ほぼ100% |
後見人等を監督する |
任意後見監督人 |
後見人等の事務 |
任意後見契約で取り決めた事項 |
本人の資格制限 |
制限なし |
後見人の権限 |
本人がした法律行為の取消権はなし |
後見の開始 |
契約締結→判断応力低下→申立て→任意後見監督人の選任 |
申立て権者 |
本人・配偶者・4親等内の親族・任意後見受任者 |
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事例-1
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Aさんは40代の男性。 |
●知的障がいの判定を受け、療育手帳を所持しています。 |
●長い間、知的障がい者施設に入所しており、住民票も移してあります。 |
●今のところ、特に問題はありませんが、両親は高齢になってきており、自分たちが世話をすることができなくなったときのことを想定して、早めに成年後見制度を利用することにしました。
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何らかの障がいのあるお子さんを持つご両親にとって、自分たちの死後、子供のことをどうしたらよいかは、深刻な悩みです。これは「親なき後の問題」といわれ、成年後見制度の利用によって、解決することになります。
法定後見制度では、申立ての準備を始めてから実際の制度利用までには数か月を要しますので、早めに準備を始めることが大切です。
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事例-2
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Bさんは20代の男性。 |
●知的障がいの判定を受け、療育手帳を所持しています。 |
●自宅はなく、知的障がい施設に入所しています。本人以外の家族も全員、知的障がいがあるためそれぞれ別の施設等で生活しています。 |
●障害者自立支援法の利用や財産管理のため、成年後見制度の利用を検討しています。ところが、両親はすでに他界し兄弟も同様に知的障がい者であり、他の施設で生活しているため申立て手続きやその費用の負担をすることが困難な状態です。そこで市長が申立て費用を立て替え、市長申立てをすることになりました。
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市町村長申立ての際、自治体が立て替える費用は、家庭裁判所への申立て手数料、精神鑑定費用、東京法務局への登記手数料です。これらの費用については、本人に資力がある場合には、後見等が開始された後に返還する必要があります。その際には当該自治体から成年後見人に対して請求書が発行されますので本人の財産から精算を行います。 |
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事例-3
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Cさんには、知的障がいをもつ息子さんがいます。 |
日常生活は、両親が支えていますし、特に気になることはないようです、もっとも本人は一人っ子で、両親が亡くなってしまうと援助をしてくれる身寄りはいません。 |
成年後見制度の利用を勧められてはいますが、両親ともまだ元気なので、踏み切れないでいます。
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年老いた母親と知的障がいの長男の二人暮らしの家庭で、母親が急死、長男も餓死というような悲劇が現実に起こっています。「いつか」ではなく、できるだけ早めの利用を勧めるべきでしょう。 |